自己紹介

フローリアン・プルカルトホーファー

ウィーン大学東アジア学科
社会学、都市研究、空間論、評論とユートピア

研究題目

本研究では、日本の都市において「空間」に対する人間の意識的な知覚と都市の社会的な構成に着目し、それらが展開され、根付いていくプロセスに光を当てることを目指す。都市空間に関する学究的なアウトプットは数多くありながら、それらは、正規の学科としての学問領域のトピックとしては隔たりを感じる。
 空間とは様々な場面で使われる概念である。研究領域によって、空間は絶対的なもの、あるいは、相対的なものと考えられている。この科学的な定義は様々な研究領域のニーズに従って変容する、人々の個人的な日常生活に関わる空間概念とはほとんど無関係であると言える。同様に、あらゆる科学的な理論は必ず無矛盾性を有し、また合理的な概念であることから、社会学や心理学の空間理論も、日常生活に関わる空間概念とは無関係である。
 言うまでもなく、科学的な空間概念は有意義で必要ではあるが、しかし社会学や都市計画や建築学の領域では、個人的な日常生活に関わる空間概念に留意して、地域社会における空間についての世論を把捉することが必要である。本研究においては先行研究に倣い、そのような空間を「生活空間」あるいは「生きられる空間」と呼ぶこととする。個人的な空間概念は、日常生活における会話と行動と制度を通じて構成される。会話とは、ある人が、直接他者と会話することのほか、情報やメデイアという外部要因にも意味付けさせられるものである。一方で、個人的な(空間についての)意見は、地域社会の世論と相互に影響し合っている。自らの行動は他者との関係でその在り方を変え、また、自らの行為が社会的なシステムを変更させもする。
 簡単にまとめると、私の研究目的は人文学や社会学の科学的な空間理論を、それとは異なる観点から見た空間概念によって補足することである。そのために前述の点を分析し、「個人は生活空間をどのように知覚するか」、「個人的な空間の発想はどのように社会の空間概念で解釈され、反対に社会の空間概念は個人的な空間の発想においてどのように解釈されるか」などの質問に答えを見出したい。これらの目的は一般的な認識のように見えるが、ケース・スタディーにおいては、地域や社会、文化への影響に留意すべきであろう。
 研究方法はインタビュー調査、参与観察やまちづくりの過程を観察で空間にまつわる経験や意見を聞知する。

 空間知覚の調査は二つの所で行われる。一つ目は東京都世田谷区の下北沢駅の隣な地域である。二つ目は東京都世田谷区の明大前駅の周辺である。これら二つの地域では、古くから地域的な路線の交差地点として乗換駅があって、近年郊外電車の鉄路が大規模に改装し、物理的都市空間が大きく変わった。 添えるに合わせて町づくりプロジェクトが進められており、公共空間についての議論が展開されている現場である。

研究プロジェクトのホームページ https://japanologie.univie.ac.at/?id=64462